原告より、前回の2つの宿題に応答する準備書面(1)を提出。
1、具体的にどのような学問の自由が侵害されたのか
2、前訴との関係:前訴で審理済みではないのか
これを受け、裁判所は被告に対し、訴状の中身について認否・反論するよう指示。
次回は、12月5日(月)14時30分。
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平成26年(ワ)第245343号 損害賠償請求事件
原 告 柳田 辰雄
被 告 国立大学法人東京大学
原告準備書面 (1)
2016年10月26日
東京地方裁判所民事第14部合2A係 御中
原告訴訟代理人 弁護士 柳原 敏夫
前回期日において裁判所から原告に出された2つの宿題に対する原告の回答は以下の通りである。
第1、具体的にどのような学問の自由が侵害されたのか
訴状でくり返し主張している通り(2頁1行目以下。7頁16行目以下。9頁下から12行目)、「学問の自由」が侵害されたと主張する学問とは本件学融合のことである。すなわち、もともと学融合とは、《学際性をさらに推し進めた「学融合」という概念で新しい学問領域を創出すること》(甲3。被告が学融合について述べたホームページ)といった意味であるが、本件においては、「国際政策協調学」「国際政治経済システム学」「国際環境組織論」の3つの分野の学問が連携協力する学融合(以下、本件学融合という)という新しく創出された学問領域の「学問の自由」が侵害されたものである。
原告陳述書5頁3(甲1)でも詳述した通り、本件学融合の研究対象は「国際システム」であり、この「国際システム」を一つの全体として冷徹に理解するために、国際システムの動態的な構造をより客観的に研究する「国際政治経済システム学」、国際システムがよりよく機能するために、2国間および多国間の政策の協調を研究する「国際政策協調学」、及び国際連合等の組織自体のガバナンスという統治と自治を研究する「国際環境組織論」の3つの学問が緊密に連携協力したものである。従って、本件学融合の研究にとって、これらの3つの学問の研究と相互の連携協力が不可欠である。それゆえ、本件において、「国際政策協調学」分野の廃止により、本件学融合の研究に重大な支障を来たしたのは当然であった。
第2、前訴との関係:前訴で審理済みではないのか
1、結論
本件において、原告の学問研究の自由の侵害を基礎づける事実、すなわち訴状6頁~7頁9行目の「3)、実際の手続」で主張した事実は、いずれも前訴(御庁平成24年(ワ)第4734号損害賠償請求事件)では何も審理(主張・立証)されておらず、それゆえ判決中で事実認定もされていない。以下、個別に言及する。
2、「国際政策協調学」分野を変更(廃止)した手続
訴状の主張とこれに関する前訴の審理状況を表にすると以下の通りである。
本訴の訴状6頁(3)、ア
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前訴の審理状況
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原告陳述書(甲1)13頁4に詳述した通り、「国際政策協調学」分野の変更(廃止)は、本来の手続を踏まずに、国際協力学専攻の当時の専攻長だった國島正彦教授(以下、國島専攻長という)の独断で実施されたものである。すなわち、次の点で違法に実施されたものである。
①.分野変更の発議において、4頁Ⓐで前述した通り、最も重要な手続である「基幹専攻会議の審議・決定」を経ていないこと(仮に「基幹専攻会議の決定に代わるもの」として教授懇談会の決定があり得るとしても、教授懇談会の正規の審議・決定すらも実は経ていない〔甲1原告陳述書17頁表〕)。
②.のみならず、発議を受け、分野変更を実際に審議、決定する分野選定委員会の審議・決定もまた経ていないこと(甲1原告陳述書18頁表)。
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①及び②の「分野変更」に関する事実主張もなければその立証もない。
それゆえ、一審判決中に事実認定もない。
尤も、一審判決中に、原告主張として「分野」という文言が出てくるが(甲37.15頁12行目)、これは「当該分野の教授選考」という意味として「分野」を使用しているのであって、「分野変更」の意味ではない。
だからこそ、当該原告主張に対する裁判所の検討(2、(2))において、「分野変更」に関する言及が一度もない。
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3、分野変更後の教員選考手続
訴状の主張とこれに関する前訴の審理状況を表にすると以下の通りである。
本訴の訴状6頁(3)、イ
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前訴の審理状況
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以下は本訴の論点そのものではないが、関連論点として主張しておく。
本件において、アの分野変更後の教員選考手続においても、本来の手続を踏まず、以下のように違法に実施されたものである。
①.教授選考を具体化する段階で、
本来であれば、次の手続を踏むべきところ、本件では1つも実施しなかった。
(ア)、基幹専攻会議で公募の内容を審議・決定した上で公募を実施。
(イ)、人事小委員会が応募者から有力候補者を2~3人選定し、基幹専攻会議に推薦。 (ウ)、基幹専攻会議で有力候補者から最終候補者1名を、応募者などの利害関係者と助教を除いた全会一致で決定。
②.選考委員会において、発議専攻の最終候補者1名の決定を承認する段階で[1]、
原告の知らない間に原告を選考委員会の委員から解任した上で、全会一致で発議専攻の最終候補者1名の決定を承認した(甲1原告陳述書16頁4月28日及び6月14日の記述)。
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①(ア)~(ウ)の事実及び②の事実はいずれも事実主張もなければその立証もない。
それゆえ、一審判決中にそれらの事実認定もない。
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4、「開発技術政策学」分野の分野変更と教員選考手続
訴状の主張とこれに関する前訴の審理状況を表にすると以下の通りである。
本訴の訴状6頁(3)、ウ
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前訴の審理状況
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以下も本訴の論点そのものではないが、関連論点として主張しておく。
本件において、「国際政策協調学」の分野変更及び教員選考とほぼ同時期に、同時進行で、「開発技術政策学」分野の分野変更と教員選考が進められたが、この手続においても、本来の手続を踏まず、以下のように違法に実施されたものである。
①.分野変更の発議において、本来の決定機関である基幹専攻会議の審議・決定を経ていないこと(その上[2]、教授懇談会の正規の審議・決定も経ていない〔甲1原告陳述書20頁表〕)。
②.教授選考を具体化する段階で、
本来であれば、次の手続を踏むべきところ、本件では1つも実施しなかった。
(ア)、基幹専攻会議で公募の内容を審議・決定した上で公募を実施。
(イ)、人事小委員会が応募者から有力候補者を2~3人選定し、基幹専攻会議に推薦。 (ウ)、基幹専攻会議で有力候補者から最終候補者1名を、応募者などの利害関係者と助教を除いた全会一致で決定。 |
①の「分野変更」の事実及び②(ア)~(ウ)の事実はいずれも事実主張もなければその立証もない。
それゆえ、一審判決中にそれらの事実認定もない。
尤も、一審判決中に、原告主張として「分野」という文言が出てくるが(甲37.15頁12行目)、これは「当該分野の教授選考」という意味として「分野」を使用しているのであって、「分野変更」の意味ではない。
だからこそ、当該原告主張に対する裁判所の検討(2、(2))において、「分野変更」に関する言及が一度もない。
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以 上
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